それを夢だと知っていた。
がくんと大きく揺れて、車両は路肩に止まった。イラク政府高官と、通訳のために同乗した時だったように思う。とっさに高官を伏せさせて、彼は外を覗いた。護衛の軍用車から兵士たちが発砲していた。運転手が、デモ隊から銃撃を受けました、と叫んだ。
攻撃は数分もしなかった。兵士たちはばらばらと死体と武器の確認に向かっていた。失礼、と高官に言い置いて、彼も外に出た――その行為が職務を逸脱することは知っていたけれども。
兵士たちの中に足を踏み入れると、彼らは怯えたような、とまどうような顔をしていた。分隊長にどうしたんだ、と聞くと、その男はひどくためらってから、言った。
「彼らは武器を持っていません」
それはとても重い沈黙だったように思う。愕然とすることすらできずに、彼は息が詰まるのを感じた。だって、もしもこのイラク人たちが無実だというのなら、銃撃を受けたと言ったのは誰だったのだろう。
別の兵士が泣き出しそうな顔で言った。
「この事態をどう説明するんですか、少尉」
どうもこうもないことを知っていた。これは罪だと、誰もが理解していたのだろう。それとも改めて自覚したいのか、――自分たちは罪を犯したのだと。
彼は笑って答えた。
「俺たちには応戦する必要があった。間違いは誰にだってある――この戦いは、相対的には正当なものだ。そうだろう?」
足元で、ほとんど死にかけた少女が「ウンム」と泣いているのを聞いていた。遠く母国にいる養い子と、同じくらいの年ごろだった。
だけれどそれでも、こんな世界を見るために生まれてきたわけではなかった。
がくんと大きく揺れて、車両は路肩に止まった。イラク政府高官と、通訳のために同乗した時だったように思う。とっさに高官を伏せさせて、彼は外を覗いた。護衛の軍用車から兵士たちが発砲していた。運転手が、デモ隊から銃撃を受けました、と叫んだ。
攻撃は数分もしなかった。兵士たちはばらばらと死体と武器の確認に向かっていた。失礼、と高官に言い置いて、彼も外に出た――その行為が職務を逸脱することは知っていたけれども。
兵士たちの中に足を踏み入れると、彼らは怯えたような、とまどうような顔をしていた。分隊長にどうしたんだ、と聞くと、その男はひどくためらってから、言った。
「彼らは武器を持っていません」
それはとても重い沈黙だったように思う。愕然とすることすらできずに、彼は息が詰まるのを感じた。だって、もしもこのイラク人たちが無実だというのなら、銃撃を受けたと言ったのは誰だったのだろう。
別の兵士が泣き出しそうな顔で言った。
「この事態をどう説明するんですか、少尉」
どうもこうもないことを知っていた。これは罪だと、誰もが理解していたのだろう。それとも改めて自覚したいのか、――自分たちは罪を犯したのだと。
彼は笑って答えた。
「俺たちには応戦する必要があった。間違いは誰にだってある――この戦いは、相対的には正当なものだ。そうだろう?」
足元で、ほとんど死にかけた少女が「ウンム」と泣いているのを聞いていた。遠く母国にいる養い子と、同じくらいの年ごろだった。
だけれどそれでも、こんな世界を見るために生まれてきたわけではなかった。
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