I lost her.
2004年8月7日 アクア=エリアス(?) 水が重苦しいと感じたのは初めてだった。夏、森に降る雨はじっとりと羽水の肌を濡らし、かといって暑さに朦朧とする脳を冷やすでもない。ちっとも胸の奥からこぼれてはくれない涙の代わりに、降り注ぐ雨が厭わしかった。
どうしていまさら気づいて泣きたくなるのだろうと思う。初めて自覚したのはもう三十年か、ひょっとしたら四十年も昔のことだ――昨夜、眠るように亡くなった妻を愛していたことなど。それが一緒に暮らして子どもを育ててゆく内に、彼女を愛していたのだということをほとんど忘れかけていた。いつでも彼女は傍にいたから。
馬鹿だ、と思う。泣きたいとも。愛した女を亡くしたからではなく、彼女を愛していたことを忘れてしまった自分をこそ、罵倒して泣きたかった。
――ああ、だから雨なぞ降ってくれるな。なぜなら自分が泣けないから。子どものように喉を鳴らしてしゃくり上げながら、けれども涙はこぼさずに願う。
無神経な親友でさえこの痛みを理解してくれている時、唯一の盟友たる水が自分を裏切っていることが、なぜだかとてつもなく怒りを招いていた。
どうしていまさら気づいて泣きたくなるのだろうと思う。初めて自覚したのはもう三十年か、ひょっとしたら四十年も昔のことだ――昨夜、眠るように亡くなった妻を愛していたことなど。それが一緒に暮らして子どもを育ててゆく内に、彼女を愛していたのだということをほとんど忘れかけていた。いつでも彼女は傍にいたから。
馬鹿だ、と思う。泣きたいとも。愛した女を亡くしたからではなく、彼女を愛していたことを忘れてしまった自分をこそ、罵倒して泣きたかった。
――ああ、だから雨なぞ降ってくれるな。なぜなら自分が泣けないから。子どものように喉を鳴らしてしゃくり上げながら、けれども涙はこぼさずに願う。
無神経な親友でさえこの痛みを理解してくれている時、唯一の盟友たる水が自分を裏切っていることが、なぜだかとてつもなく怒りを招いていた。
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