Who is in your eyes?
2004年2月3日 交点ゼロ未満 四年前から噛み合っていなかった歯車を、今更はめこもうとしても無駄なのだと、理解できている。だがそれでも愚かな修理工の真似をしてしまうのは、きっと彼に振り返ってほしいからなのだろう。
月がきれいだったので庭に出て、芝生の上にごろりと転がっていたら、足下から声が聞こえた。聞き慣れた男の声は、近ごろとみに落ちつきを増してきたように思える。
「ニーニャ、風邪引くぞ」
英語の聞き取りももうほとんど支障なくできるというのに、彼はいまだによくスペイン語で話しかけてくる。それは気遣いなのだろうが、なんとはなしに年齢を認められていないような気がして、嫌だった。
もう、十八になるのに。
ためいきをついて、彼女は起き上がった。彼のスペイン語に応えて、つっかえがちな英語を口にしている自分も、たいがい馬鹿だと想いながら。
「引かない。ダニエルの方が、寒い」
それでも養父の言いつけには素直に従って、彼女はさっさと家の中に入った。テレビの前で、小さな扇風機がくるくると回っていた。
彼は、と振り返ってみると、まさしく庭から上がってくるところだった。片手にはビールのビンを持って、してみるとシャワーから上がったばかりなのだろう。
「暑いな、クソッ」
ぶつぶつとぼやきながらすれ違った彼の目に自分が映っていなかったことを、彼女は知っていた。
月がきれいだったので庭に出て、芝生の上にごろりと転がっていたら、足下から声が聞こえた。聞き慣れた男の声は、近ごろとみに落ちつきを増してきたように思える。
「ニーニャ、風邪引くぞ」
英語の聞き取りももうほとんど支障なくできるというのに、彼はいまだによくスペイン語で話しかけてくる。それは気遣いなのだろうが、なんとはなしに年齢を認められていないような気がして、嫌だった。
もう、十八になるのに。
ためいきをついて、彼女は起き上がった。彼のスペイン語に応えて、つっかえがちな英語を口にしている自分も、たいがい馬鹿だと想いながら。
「引かない。ダニエルの方が、寒い」
それでも養父の言いつけには素直に従って、彼女はさっさと家の中に入った。テレビの前で、小さな扇風機がくるくると回っていた。
彼は、と振り返ってみると、まさしく庭から上がってくるところだった。片手にはビールのビンを持って、してみるとシャワーから上がったばかりなのだろう。
「暑いな、クソッ」
ぶつぶつとぼやきながらすれ違った彼の目に自分が映っていなかったことを、彼女は知っていた。
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